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双頭のバビロン 皆川博子





爛熟と頽廃の世紀末ウィーン。
オーストリア貴族の血を引く双子は、ある秘密のため、
引き離されて育てられた。ゲオルクは名家の跡取りとなって
陸軍学校へ行くが、決闘騒ぎを起こし放逐されたあげく、新大陸へ渡る。
一方、存在を抹消されたその半身ユリアンは、
ボヘミアの「芸術家の家」で謎の少年ツヴェンゲルと共に高度な教育を受けて育つ。
アメリカで映画制作に足を踏み入れ、成功に向け邁進するゲオルクの前にちらつく半身の影。
廃城で静かに暮らすユリアンに庇護者から課される謎の“実験”。
交錯しては離れていく二人の運命は、それぞれの戦場へと導かれてゆく―。
動乱の1920年代、野心と欲望が狂奔する聖林と、鴉片と悪徳が蔓延する上海。
二大魔都を舞台に繰り広げられる、壮麗な運命譚。





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まだまだコンプリートに程遠いにわかファンの私。
それでも海外を舞台にした作品よりも国内ものの
しかも短篇集の方を好む傾向にあったので、
正直なところ本作に対し然程期待感を持っていなかったのです。

ですが!

これは完全にやられました・・・
それは多分、舞台芸術好きの私が強烈に惹かれ続けている
京劇であったり、生涯大切にしたいガルシンの小説
言及してあることも大きな要素ではあるのですが、
互いを個と強く認識することもないまま切り離された
結合双生児ゲオルクとユリアンに起こる不可思議な現象、
或いは彼らをめぐる人たちの思惑や愛といったものが
ハリウッドや上海、ウィーン、ドイツなどといった
色彩の異なる他国の歴史や映画史を交えつつ見事に交錯し、
更にその潮流の果てにおとずれる
清々しいまでの覚悟を決めたユリアンの言葉が
哀切と浄化を伴う感動をもたらしてくれたからにほかありません。

読書欲が一向に復活せぬまま
ショッピングついでに訪れた約一年ぶりとなる図書館。
たまたま開架で見つけ持ち帰ってきた本でしたが
久しぶりに本を抱きしめたくなる感覚を味わえました。
本当にありがたい。
これを機に昔の感覚がもどるといいなぁ。

それにしても齢80を超えてもこのレベルって・・・
本当に素晴らしいことですね。






お気に入り度:★★★★★★★★★★





Top▲ | by la_lune11 | 2013-06-17 11:38 | ・読書:ま行の作家
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